その三日後。あの日から、俺は彼女に会っていなかった。まぁ、彼女は診察のある時にくるっていってたし……普段は来るわけないか……
俺は今日こそは、と期待して、彼女に会った、桜の木の下に行った。
――いた!
狂喜し、俺は小走りで彼女のところに向かった。先日と違う服装だが、暖色に包んでいるところは変わっていなかった。
「久しぶり!」
「和壱さん」
彼女は前よりもいい笑顔で俺の名を呼んだ。
……のは嬉しいんだけど……
「……さんはやめようよ? 桜花ちゃん」
「あ、す、すみません……えと……」
「敬語も却下」
真っ赤になってうろたえる彼女をみて、俺は思わず吹き出してしまった。前は、彼女がこんな感じだったのかと思うと、何だか親近感が湧いてくる。
それから、俺達はベンチに座って、色々な話をした。俺達は同い年で、桜花の名前が、桜の花と書くことを知った。そして、桜花の病気のことも……
「結構酷いみたいなんだ。回復してから、粋がって色んなスポーツ立て続けにしたから……。もう、運動も控えなきゃだし、控える以前に、ちょっとしたことで身体が悲鳴上げるの……話す時だって、かなり気を使って柔らかく話さないとだし……」
確かに、桜花の話し方は、ゆっくりと、柔らかい話し方だ。それなのに、微かにだが息が上がってる。相当な負担なのだろう……
「また手術しないとみたいなんだけど、今回のは前と違って成功率が低いんだって。もう、余命は短いの……なのに、やりたいことが出来ない身体なんてね……」
「そんな事言うなよ! 死ぬって、決まったわけじゃないだろ!?」
耐え切れず、俺は大声を上げてしまった。今まで寂しげだった桜花の表情が止まる。
「それは、ただの、医者の予想だろ? 百パーセント確実って言い切れるものじゃないじゃないか。成功率だって、予想でしかないんだし、いくらあるのか知らないけど、成功する確率だってあるんだろ? マイナスに考えたらダメだって。な?」
胸の奥から込み上げてくる何かを何とか抑えながら俺は言った。だが、これが本心である事に変わりはない。誰かが死ぬなんていうのは、俺は許せないし、信じたくない。それが、十年来の友達であっても、つい先日知り合ったばかりの人であっても……。
「……そう、ね。弱音ばっか吐いてられないわね。ありがとう、和壱」
そう言って彼女が見せた笑顔は、桜の花びらによく合った、柔らかい笑顔だった。
第五話へ続く